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  • 2014.03.05 Wednesday
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政治文明論への招待 番外編

   NHK「ハーバード白熱教室」が先日終わりました。M.サンデル教授による「正義」の講義は、エネルギッシュかつスピーディ、さらに内容の濃いもので、大いに感銘を受けただけでなく、大学での授業で応用したくなる箇所が随所にありました。サンデル教授は『正義論』を著したJ.ロールズの論敵として知られました。両者の激論は、以前に論文で取り上げて整理を試みましたが、現代政治哲学の深淵に触れる議論に、四苦八苦した記憶があります。


  「正義」をめぐる両者の議論はさておき、サンデル教授の授業を映像を通じてみる機会があったことは、時代の変化をうかがわせます。授業料を納めた学生が講義を聞けるという原則から、大学の講義は非公開が通常です。今回、ハーバード大学がこの原則を覆してTVで放送したことは、もちろんそれを通じて優秀な学生を海外からリクルートするという意味もあるでしょうが、一方で大学の新たな役割をも示しています。大きく変化する時代のなかで、知的営為の牙城として、不特定多数の聞き手に対してメッセージを発する気概が、現代の大学教育において求められていると思います。


  もちろん、このような派手な取り組みとは比べるべくもありませんが、この番組から個人的に様々なインスピレーションを得たことも確かです。これを実践する取り組みの一つとして、今日の「政治文明論」の講義では、前回行った小テストの再考を学生に求めました。前回の小テストのテーマは、「インド、ラテンアメリカ、ロシアのいずれが近代化・西欧化に最も『成功』したといえるかを論述せよ」。人数が少ないこともあったので、まず全員に自分の回答のポイントを紹介させ、自らと異なる地域を選んだ人の回答について、自らの回答と照らし合わせながら、再び問題を考える、ということを行いました。基本的には、どの国・地域を選んでも回答は成立します。実際、回答は三通りに分かれました。しかし問題は、どうやって自らの論理や考え方を立証するか、にあります。


  既に講義のなかで、インド、ラテンアメリカ、ロシアについて、それぞれ取り上げています。このうち、回答者が一番多かったのは「ロシア」で、その理由の大半は「植民地化されることなく、自発的に近代化・西欧化したから」というものでした。この場合、「成功」の基準は「自発性」にある、という前提になります。この観点から他の二者を消去し、ロシアにおける近代化・西欧化の過程を敷衍すれば、回答として成立します。しかし、「成功」についての定義に考察が加えられていなければ、つまり「自発性」を「成功」の基準として採用することの妥当性が述べられていなければ、この論理は未完成となります。


  例えばラテンアメリカを選んだ場合、現地の文明が根こそぎ破壊されて西欧文明が持ち込まれた、という「支配する側」からみたならば、最も「成功」したといえます。インドの場合は、広い領土と既存の政治勢力が形式的にも存続したことにより、英国の影響力が末端にまで浸透しなかったものの、少なくとも軍事的に支配されたことで、ロシアのように支配されないために「あれもこれも」と近代西欧文明を受容するのでなく、沈思黙考する時間を得て取捨選択が可能になった、という意味では「成功」になります。いずれの場合も、「成功」の定義に検討を加えたうえで、それに基づく基準で他との比較検討を行ったか、がポイントになります。


  このように、どうとでも言える設問に対して、自らの見解をまとめる、そして他人の意見を聞いたうえで再び考え直す、という作業は、迂遠ではありますが、安易に結論に飛びつかず、しかも論理的な発言や執筆を行ううえで不可欠のもとのいえるでしょう。限られた時間のなかでのやり取りで、このメッセージがどこまで学生に伝わったかは分かりません。しかし、少なくとも小テストを受けたときよりも「書きにくくなった」と思わせれられれば、それが今日の私にとっての「成功」だったといえるかもしれません。


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