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  • 2014.03.05 Wednesday
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政治文明論への招待 9)イスラーム、インド、中国はなぜ西欧と対立しがちか

   代西欧文明は、他の文明が生み出さなかった要素を生んだという点で、非常に特異なものであることが、これまでに確認されました。しかし、その最大の特異性は、「特異なものが地球規模化した、言い換えれば普遍化した」という点です。近代西欧文明の所産である国民国家、資本主義経済、科学技術、民主主義は、合理主義および個人主義といった観念を醸成しましたが、もはやこれと無縁でいられる文明は皆無です。国民と国家の一体性を強調するナショナリズムは、いまや開発途上国の方が顕著です。資本主義経済、科学技術は強い国づくりのために欠かせないものとして、広く受け入れられています。民主主義だけは、多くの国が西欧流のものに消極的な姿勢を示していますが、少なくともその価値を正面から否定できる国はありません。


  これら近代西欧文明の四つの構成要素が非西欧世界に波及したのは、西欧諸国が植民地確保のために海外進出を図った、15世紀末以降のことです。特に、西欧諸国による植民地化が本格化した19世紀以降、その影響は世界の隅々にまで波及しました。しかし、それによって受けた影響の大きさは、地域あるいは文明ごとに異なります。結論から言うと、ラテンアメリカやアフリカで個人の精神的領域までが植民地化されたのに対して、イスラーム、インド、中国といったユーラシア諸文明は、軍事的・経済的に支配されたものの、比較的強い抵抗力を示し、西欧化の程度は限定的だっとといえます(今日の明治学院大学「政治文明論」の講義資料はこちら)。


  これらの地域では、自らの言語、地名、文字などが使用され、近代西欧文明との接触(いわゆる「西欧の衝撃」)以前からの社会制度が少なからず存続しています。インドでカースト制が、イスラーム諸国でシャリーア(イスラーム法)が、それぞれ今も現役であることは、その象徴です。また、S.ハンチントンは有名な「文明の衝突」で、将来的に西欧文明と衝突する可能性が大きいものとしてイスラーム文明と中国文明をあげています。ハンチントンの議論を額面通り支持するものではありませんが、少なくともインドを含めて、これらの国々が西欧主導の国際秩序に異議を申し立てる場面が頻繁に見られることは確かです。その意味で、イスラーム、インド、中国のユーラシア諸文明は「西欧の衝撃」の程度が比較的小さかったといえるでしょう。


  では、それはなぜなのか。理由は様々あげられますが、なかでも重要なのは、これらの文明が「西欧の衝撃」以前、巨大な帝国を築いていたことです。以前、中国における専制の風土についてとりあげましたが、基本的には同じことで、これらユーラシア諸文明では聖・俗に跨る巨大な権力を備えた皇帝による支配が一般的でした。しかし、広い領土の隅々まで皇帝の権力を浸透させることは困難で、地方は実質的に高い独立性を備えていました。西欧諸国によって支配された時期、これらの地域にも資本主義経済や科学技術が波及しましたが、その影響を受けたのは基本的に都市、そして中流以上の社会階層に大きく偏らざるを得なかったのです。木村雅昭はその著書『国家と文明システム』において、植民地時代のインドで、都市ではイギリスから輸入された綿製品が消費されたものの、農村の低所得層の間では、昔からのインド製品が売買の中心であったことを明らかにしています。その場合、必ずしも「安いものを買う」という合理的・個人的な判断でなく、村落全体を維持するために、あるいは人間関係を維持するために、多少値段が高くともローカルな商品を買っていたといわれます。皇帝ですら支配を貫徹できなかったのですから、植民地勢力がこれらの地域の隅々にまで、その支配を行き渡らせることが不可能だったと考えることに、大きな無理はありません。


  さらにまた、古くからの文明が栄えていたこれらの地域では、強固な社会制度が根付いていました。ラテンアメリカのインカ帝国、アステカ王国のように、文明が根こそぎ破壊されなかったことは、少なくとも形式上は現地政治権力を存続させ、これらの地域で昔からの生活パターンが存続することを可能にしたのです。広大で人口が多いユーラシア諸文明にとって、近代西欧文明による植民地支配による影響は、中央レベルにほぼ留まったといえるでしょう。その結果、これらの地域では、西欧的な合理主義や個人主義に批判的な精神が残ったと考えられるのです。


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  • 20:02
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コメント
時代の行方は文明の衝突より文明の対話だと言うのならかなり穿った考えだと言わざるを得ない
  • パヨクハンター
  • 2017/03/26 1:11 PM
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