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  • 2014.03.05 Wednesday
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政治文明論への招待 8)四位一体の近代西欧文明

   治学院大学の「政治文明論」で、今日はこれまでの内容を大まかに整理しなおしました。近代西欧文明の最大の特徴は、誰かによってルールを定められる「超越性」を拒絶し、自らが自らのルールを定める「内在性」を尊重することで、「合理主義」、「個人主義」、「立場の平等」といった理念が結実したことです。これらは、古代から現代に至る幾多の文明で決して生まれなかった考え方です。


  近代西欧文明を除くほとんどの文明で、個人は「社会に埋め込まれたもの」と理解されていました。多かれ少なかれ、人の一生は門地や家柄、性別といった属性によって規定され、個人による裁量の余地は制限されていたのです。それは近代以前の西欧でも同様で、キリスト教に基づく「超越性」が顕著でした。  


  もちろん、このような考え方が、何もない真空状態から生まれたわけではありません。「超越性の拒絶と内在性の尊重」は、やはり近代西欧文明が生んだ国民国家、資本主義経済、科学技術、民主主義によって生まれ、個々人に広く浸透したといえるでしょう。この四つの要素が相乗効果を発揮して生んだことから、私はこれを「四位一体の近代西欧文明」と呼びます。



  この四位一体の近代西欧文明は、個人を物心ともに解放する作用があることから、文化や宗教を越えて広く伝播する力を備えています。それは、日本も例外ではありません。


  夕方のTBSで「水戸黄門 第10部」の再放送をしています。1979年8月13日から1980年2月11日まで放映された全25話は、若かりし日の「風車の弥七」などが単に懐かしいだけでなく、やはり時代の移り変わりを反映しているように思います。例えば、第4話の箱根では、幼い姉弟による父親の敵討ちを、黄門様が助けています。TBSに限らず、最近の時代劇では、「敵討ち」というモチーフは稀なように思います。扱われたとしても、武士の面目から本人の意思とは無関係に「敵討ち」を強いられる、というパターンが多いようです。多くの場合、敵を討つという後ろ向きの生き方ではなく、武士の因習から解放された生き方を称揚する内容になっています。これは、武士という特定の社会集団の慣習によって個人が束縛されることに、もはや共感が得られにくいというテレビ局の判断なのでしょう。


  「敵討ち」そのものや、それが時代劇で取り扱うことの是非は、ここでは問題ではありません。重要なことは、視聴者ひいては国民の思考様式が変化してきているということです。武士の家に生まれ、敵を討たなければならないという宿命を受け入れ、自らの属する社会集団の慣習に従って生きることをよしとした思考から、個人が自らの意思に従って生きることをよしとする思考への変化です。


  このような個人主義を「精神の堕落」のように捉え、やたらと「武士道」を強調する向きもあります。確かに個人を社会から解放することは、道徳規律を相対化し、一元的な善悪の判断を鈍らせます。その意味で、犯罪の増加など負の側面をもつことは否定できません。しかし、その一方で、一旦手に入れた自由や権利を放棄し、慣習で縛り上げられることに同意する人がどれだけいるかは疑問です。


  一つ確実なのは、「自らの運命を自らで切り開くことがよい、あるいはそうあるべき」という捉え方が、近代西欧文明の所産である自由主義思想や進歩史観の影響を受けたものであり、それが良かれ悪しかれ個人の解放を促す作用をもつだけに、他の文明にも伝播する力をもっているということです。国民国家や資本主義経済といった制度的枠組みの受容は、これをさらに加速させます。「社会に埋め込まれた個人」をよしとした日本人の考え方の変化は、如実にこれを物語ります。ただし、その伝播には、受け手によって差異があるのも確かです。次回からは、近代西欧文明の伝播を地域ごとに類型化していこうと思います。


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