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  • 2014.03.05 Wednesday
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イギリス 自由民主党の台頭で保守党と労働党の勢力はさらに低下するか

   ギリス下院総選挙で、いずれの政党も過半数を獲得できない事態が発生しました。読売新聞は社説で、労働党と保守党が交互に政権を担当してきた二大政党制が揺らぎ始めたと指摘しています。以前に述べたように、確かにグローバル化が進むなかで迅速な意思決定と多様な利害の集約という相反する要請が生まれており、イギリスの今回の結果は、二大政党制がもつ前者の優位性を崩すものと理解できます。


  長期的には、この流れが強まることが予想されます。つまり、迅速な意思決定は確かに重要なのですが、他方で誰もが自らの意見を表出したいと考え、それが保護されるべきと考えるようになっていることも確かです。とりわけ、個人の人権が少なからず保障されている先進国で、その傾向は強まりこそすれ、弱まることは想定しにくいといえるでしょう。その場合、「迅速な意思決定」は「政府による一方的な決定」と映ることになりかねません。


  今回の選挙結果からは、議席数と得票率のアンバランスが見て取れます。保守党は306、労働党は258、自由民主党は57の議席を得ましたが、それぞれの得票率は、保守党が36パーセント、労働党が29パーセント、自由民主党が23パーセントです。特に労働党と自由民主党の得票率にあまり差がないにもかかわらず、議席数で大きな差がついていることは、一選挙区から一人しか選出されない小選挙区制の欠点、つまり死票の多さを物語ります。有権者の投票行動をより正確に議席数に反映させるためには、比例代表制の導入が不可欠です。


  この観点から、自由民主党が比例代表制の導入を求めていることは、不思議ではありません。平素であれば、保守党、労働党のいずれもがこれに否定的であり得たのですが、今回は違います。保守、労働の両党は、キャスティングボードを握った自由民主党との連立協議を模索しています。このなかで自由民主党が比例代表制導入の検討を連立協議の条件とすることは必至です。小選挙区制と二大政党制の母国であるイギリスで、かつてない変化が生まれる可能性があるのです。


  ただし、保守党、労働党の二大政党が議会で大きな議席を確保する状態が、急激に変化するとも思えません。財政赤字や金融危機後に公的融資を受けた金融機関幹部の高額のボーナスへの不満、イラク戦争への参加を肯定したブレア前首相の発言、さらに例のブラウン首相の「頑固な女性」発言もあり、労働党の人気は急落しています。この状況下で、自由民主党はイデオロギー的距離が近い労働党よりも、政策面での差異が大きい保守党との連携を優先させているようです。両党の間にはEUとの関係や移民対策に大きな差があり、自由民主党は現実政治的な判断を優先させている、といえるでしょう。


  連立政権が安定するかは、規模が多すぎず少なすぎないこと(過半数が理想)だけでなく、政党間のイデオロギー的距離が重要です。仮に保守党と自由民主党の連立政権が樹立された場合、政策運営での軋轢が表面化して政権が立ち往生する可能性も否定できません。逆に、両党間の意思疎通が非常に円滑であった場合、今度は少数政党の自由民主党の存在意義は、過半数を占める数合わせ以上のものになり得ません。この観点からすると、自由民主党が独自色を保つことは案外難しく、仮に比例代表性が導入されたとしても、二大政党の圧倒的な勢力がすぐに衰えるとはいえないのです。


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