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  • 2014.03.05 Wednesday
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安倍首相の靖国参拝に関する海外メディアの報道と若干の考察

安倍首相が靖国神社に突如として参拝してから1週間が経ちました。

この間、中国、韓国両政府からの非難は言うまでもなく、米国政府からは「失望」という、同盟国に対する表現としては極めて強い表明されたことは、周知のとおりです。

直接的に関係のない多くの国にとって、他国同士の緊張関係に巻き込まれるのは、得策ではありません。ゆえに、政府レベルで何らかの意見を表明することは、ほとんどの国がしていませんが、皆無ではありません。公式の反応として目立ったのは、最近安倍首相が接近を図っているロシア政府の反応でした。やはり26日、外務大臣のスポークスマンが「遺憾」の意を表しています。これに加えて、EUからも早い反応が出されました。26日の声明では、「この行動が地域における緊張を和らげたり、隣国なかでも中国、韓国との関係を改善するものではない」「EUは関係国に対して、信頼関係を支え、緊張を和らげ、地域の長期的な安定を担保する、肯定的で建設的な結びつきのために協力することを求める」と続きました。

直接関係ないとはいえ、これらの国・地域からみて日中、日韓の関係が悪化することは、例えばG20での協議がさらに難航するなどの弊害が出るため、少なくとも好ましいことではありません。のみならず、ロシアも、EUのほとんどのメンバーも戦勝国である以上、日本−中国・韓国の相互の主張内容の是非はともかく、大戦に関する彼らの認識そのものを否定しかねない靖国参拝は受け入れがたいでしょう。その意味においても、これらの反応は全く不思議ではありません。

これに補足して、確認できた範囲で目を引いたのは、ドイツ政府の反応でした。12月30日、メルケル首相のスポークスマンは記者会見でこの問題を問われ、「日本の内政に関してコメントはしたくない」と前置きしたうえで「一般論として、全ての国は20世紀の災厄における自らの役割について、ふさわしい行動を誠意をもってとるべきだ」と続きました。

一方、海外メディアはこれをどのように伝えているのでしょうか。言語と人手の問題から、決して体系的でも網羅的でもありませんが、しかしこれに関する海外メディアの報道の瞥見からでも、おおよその傾向は掴むことができます。以下に主だったところをレビューしますが、中国、韓国については、言うまでもないことなのでスキップします。

【ワシントン・ポスト】

靖国神社に関する解説を踏まえて、これが米国にとっての新たな懸念となるという論調で伝えています。

中国外相による安倍首相への批判を掲載し、そのうえで尖閣諸島問題がこれでより一層エスカレートしたと伝えています。最後に、安倍首相の主張を掲載しています。

タイトルそのままなので詳細は割愛。

安倍首相の反動的傾向への懸念を示し、参拝によって東シナ海をめぐる日米韓の連携に水がさされたと批判しています。

【ニューヨークタイムズ】

安倍首相の、靖国参拝が政治的な問題になること自体への不満や、「不戦の誓い」といった主張を紹介。首相が参拝を自制するようアドバイスを受け、これを守っていたが、中韓との関係改善への期待が乏しい中にあっては、遅かれ早かれ参拝するだろうという観測があったと伝えています。そのうえで、中韓の反発をそれぞれ伝えています。

なぜ、このタイミングで安倍首相が靖国に参拝したかに関して、中韓の指導者が日本政府と協議していない点に注目し、そのうえで「逆説的だが、このような中韓からのプレッシャーが安倍氏に靖国参拝をグッドアイデアだと思わせた(Paradoxically, it is Chinese and South Korean pressure on these fronts that has allowed Mr. Abe to think a visit to Yasukuni is a good idea.)」と分析。安倍首相の最終目標を憲法改正と捉え、その目的のためのステップを踏み始めたと述べ、そのうえで中韓政府に日本との協議に応じるよう提案しています。論調としては、米国自身が日本の右傾化を望ましくないものと捉えており、他方で中韓がその隙を与えてしまったという批判です。

靖国神社への参拝に関する中韓の反発を紹介したうえで、多くの批判があるなかで特定秘密保護法を成立させ、無人機計画を含む防衛計画の策定などを安倍政権の右傾化と表現。中国の台頭に対抗するパートナーだった日本は、米国政府にとってもう一つのアジアの問題となったと述べています(But rather than become a stable ally, Tokyo has become another Asian problem for American officials because of its quarrels with Beijing)。

【ロイター通信】

近年の領土問題、歴史問題、さらに靖国神社をめぐる中韓の批判の要旨を伝えたうえで、日本と中韓の経済関係にどのような悪影響がでるか予測できないと述べています。また、専門家の意見として、安倍首相は順調な景気回復に基づく高い支持率が、特に保守的な支持層の間で、靖国参拝をめぐる批判を抑制できるという計算があったとも伝えています。

安倍首相は中韓からの批判や米国の「失望」のリスクを承知しながら、日米の同盟関係の強さをはかっていると分析。首相に近い外交筋の発言として、「米国が将来的にも我々の同盟国かって?もちろん」「国民の関心は経済、収入、社会福祉、そういったもので、対外政策は投票に決定的インパクトをもたない」。一方、米国外交筋の表現として、「靖国参拝が米国政府に提起しているのは、アジアにおける同盟国、パートナーとしての安倍首相の信頼性を決定することだ」。

【テレグラフ】

靖国神社そのもの、および靖国神社をめぐる日本、中韓の対立点などについての解説記事。極めて中立的な書き方。そのうえで、この参拝で日本−中韓の関係がより深刻なものになるという、至極妥当な予測を掲載。

【エコノミスト】

安倍首相の参拝そのものは、そのイデオロギー的立場や言動からして、さほど驚くべきことでないかもしれないが、ほとんどの人がこのタイミングで参拝すると予測していなかったと述べ、普天間基地の移設問題にめどがついたことで、最も懸念されるとみられる米国との関係上、首相に参拝の道が開けたという見方を紹介。そのうえで、首相の参拝が今後も続き、この問題がまた浮上することが予測されると述べている(タイトルが秀逸)。

【フランス24】

安倍首相を「ナショナリスト」と紹介し、「靖国神社が軍国主義の象徴であるかのような誤解がある」「平和を祈念するために参拝した」というその主張を紹介。一方、中国、韓国の反発を伝えたうえで、「日本の右傾化と軍国主義の台頭に関する米国の懸念に、決定的に油を注ぐ」という見方を伝えています。

AFPからの配信として、「特に中国に関して、尖閣諸島や防空識別圏の問題などで、関係がこれ以上冷え込む余地がないことが、安倍首相にとって参拝をふさぐ障害がなくなった」という英国の専門家の見方、「北東アジアの新たな不安定要因を作り出した」という日本の専門家の見方、「中国に立ち向かう自分を演出することで英雄的なイメージを作り出そうとするチキンゲームに着手した」という中国の専門家の見方などを紹介。

【グッドモーニング・トルコ】

共同通信からの配信として、安倍首相の参拝とその主張、中韓の反発、米国の「失望」と「北東アジアでの緊張を高める」という懸念、さらに日本の有識者の懸念などを淡々と伝えています。

【ジャーナル・オブ・ターキッシュ・ウィークリー】

新華社通信からの配信として、安倍首相の参拝が中国国民の感情を深く傷つけ、日本の政治家の参拝が日中、日韓の関係改善を阻害していると伝えています。

インド・エクスプレス

【ザ・タイムズ・オブ・インディア】

AFPからの配信として、靖国神社について簡単に説明した後、主に中国側からの「日本の拡張主義の表れ」という批判を紹介。また、台湾からの批判も伝えています。

【アル・ジャズィーラ】

中国側の批判をまず紹介し、その後に安倍首相の主張を紹介。いずれの言葉もこれまでになく激しく、既に尖閣諸島をめぐる対立が激しくなっているなかで、参拝が両者からのさらなるレトリックの応酬に発展すると予測。併せて、韓国政府からの批判も紹介。

若干の考察

冒頭に断ったように、このレビューは決して体系的でも網羅的でもなく、検索の上位やニュースヘッドラインの上位にきたものを無作為に取り上げたものです。しかし、多くのインターネットユーザーは国を問わず、よほど時間のある人はともかくとして、ヘッドラインの上位にくるニュースや、検索の上位にくる記事からみていくものではないでしょうか。良くも悪くも、それが国際世論を形成する一要因であることは否定できません。

その意味でいえば、ざっと見た限り−当然と言えば当然ですが−どうみても安倍首相や日本政府に好意的な評価が支配的とはいえません。中国、韓国側の主張が受け入れられているとは言えません。しかし、例えば私が確認したなかで最も中立的な報道とみえたテレグラフの解説記事が述べていたように、少なくとも今回の参拝が日中、日韓の緊張を高めたこと自体は確かです。その意味で、日本が一種のトラブルを引き起こしたと受け止められたとしても、当然です。多くの報道からみてとれるように、そして恐らく事実なのでしょうが、「中国や韓国からの反発が強くあることを、そして米国も懸念を示していることを承知しながらも参拝した」ことが、そして米国が「失望」を示したことが、この見方を強めています。安倍首相が日米同盟を試しにかかっている、というロイターの解説は秀逸だと思います。

そして、多くの日本人が思っているほど、外部からの日本に対する視線は、決してやさしいものではありません。米国、ロシア、ヨーロッパ諸国の大半、中国、これらはいずれも戦勝国であり、まして靖国参拝が中韓を最も刺激する要因で、関係がこれまでになく悪化しているなかでとなれば、論調として「日本の軍国主義の復活」を懸念するものが出たとしても、不思議ではありません

実際、憲法改正、特定秘密保護法、新しい防衛計画などは、AFPやロイターといった大手メディアで以前から警戒感をもって報道されており、さらにそれは多くの開発途上国、新興国にも配信されています。そして最近では、「ソフトパワー」の拡充を目指す中国が、新華社通信や(アル・ジャズィーラを真似た)24時間の英語放送CHINA24を通じたニュース配信に余念がありません。今回確認できた中では、例えば中東のオマーンという、日本人のなかには「どこそれ」と思うひとがあり得る国でも、AFPにより、中韓の批判、共同通信が行った世論調査の結果(外交関係に配慮する必要がある:69.8%、首相参拝がよくなかった:47.1%)などを記した記事が配信されていました。

一部の日本人が、「親日的」と期待をかけるインドやトルコでも、上で確認したように、同様の傾向がみられます。例えば、さきに示したメルケル首相のスポークスマンの談話は、AFPを通じてインドでも配信されています。これもやはり、良くも悪くも、国際世論を形成する一要因です。

これらのメディアワークで決定的に後れをとっている日本が−仮に安倍首相の「理解を得られるように努める」という意思が本物だとしても−これをひっくり返すことは、きわめて困難です。少なくとも、ごく簡単なレビューからでも、「理解を得られるように努力する」という安倍首相の主張は、オッズが低いと言わざるを得ません。それとも、国際的な支持を得られる、なにがしかの勝算があるというのでしょうか。あるいは、各国にある日本大使館は現地メディアの報道をサーベイしているはずですが、ぜひ外務省にはそれをみせてもらいたいとも思います。

別に、全てを外部の基準に合わせろというのではありません。また、中国や韓国に対して憤懣をもつひとが、この数年で急速に日本に多くなったことは理解しています。しかし、「そんなつもりはない」とか「詳しいことを知らないのに勝手なことを言うな」という反応をして、「首相が参拝するのは当たり前だ」という内輪だけで分かる意見を言い合うのは、極端な言い方をすれば、第三者の視線を無視して電車で座り込む若者グループと同じです。少なくとも、成熟した大人のすることではありません(もっとも、最近では50歳代以上でも他人の視線を気にしない、全く尊敬できない年長者も多くなりましたが)。意見をもつ自由は、他者が意見をもつ自由を尊重して、初めて認められるべきものです。言いっぱなしの主張は、決して国際的に受け入れられるものではありません。

「個人」「人格」を表す英語パーソン(person)は、「仮面」を表すギリシャ語のペルソナ(persona)からきています。古代ギリシャの悲劇、喜劇で役者がつけた仮面は、それをつけることで、観客からみてその役者が誰かになりきることを意味しました。つまり、人間は社会のなかで、なにがしかの役割や立場にあり、いわばその「役割」を演じることで初めて「人間」足り得るという思想がそこにはあります。「攻撃的で、他者からの評価を気にしない」という「仮面」をつけることが、国際社会という社会における日本という「人格」にとって、決して好ましくないことは確かといえるでしょう。


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