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  • 2014.03.05 Wednesday
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米国の銃規制がもつグローバルな意味

12月14日、米国コネティカット州の小学校で、児童を含む26人が殺害される銃乱射事件が発生しました。米国では開拓時代の伝統と独立戦争の歴史から、「市民の自衛する権利」が憲法に明記され、銃器の保有が権利として尊重されてきたため、銃の保有を規制することは政治的にデリケートな課題でした。しかし、この数年、銃の乱射事件が相次ぎ、今回小学校までが標的にされたことは全米を揺るがし、オバマ大統領はついに銃規制の必要性を明確に打ち出し始めました

しかし、これに反対する意見もあります。なかでも、銃規制に強硬に反対する勢力としてあるのが、全米ライフル協会(NRA)です。NRAはスポーツハンティングの愛好家の集まりで、「市民の自衛する権利」を強調しています。その会員は400万人以上おり、主に会費から成る資産は2億ドルを上回ります。全米有数の資金力と動員力を背景に、NRAはこれまでも銃の規制が政治問題となるたび、議会に働きかけるロビー活動を通じて、銃への規制を阻んできました。

その論理は、「銃が悪いのではなく、悪い使い方をする人間が悪い」というものです。これに基づき、NRAは青少年への銃の使い方などの教育を行っており、さらに今回の事件では「不道徳なTVゲーム」や、ハリウッドの「暴力的な映画」が殺人を助長していると批判しています。銃そのものが意思をもって人を撃つわけでなく、それを悪用する人間がいるから悲劇的な事件が発生するのは確かで、その点でNRAの論理には一理あると言わざるを得ません。

とはいえ、物事の発生には、その大きな背景となった遠因と、直接的な契機となった近接因があります。犯罪が発生した背景に、その生い立ちや環境に犯人が影響を受けたことがあるのは確かでしょうが、その手元に銃がなければ、「銃による殺人」は発生し得ません。その意味で、社会に銃が溢れていることが、銃犯罪を起こしやすくする、少なくとも一因であることは確かでしょう。

実際、今回の事件を受けて、米国内部ではNRAに厳しい視線が向けられており、Facebook を削除するなどの対応に追われています。ところが、「意味のある貢献をする用意がある」として開かれた21日の記者会見で、NRAのウェイン・ラピエール副会長は銃犯罪の脅威から子どもを守るために、米国の全ての学校に武装警備員を配備することを提案しました。これはNRAが「銃によって安全を確保する」という、従来からの主張を基本的に変更していないことを示すものです。

今回のNRAの反応に、米国内では賛否が分かれていますが、いずれにせよ、これまでになく米国内部で銃規制が本格的に政治問題になったことだけは確かなようです。

一方で、この問題は、ひとり米国だけの問題ではありません。「市民が自衛する権利」を擁護する歴代政府のもと、米国は世界最大の武器輸出国であり続け、これが世界の紛争地帯に武器が流入することの、大きな原因の一つであり続けてきたのです。

一人で携行、使用できる拳銃、自動小銃、手榴弾などは、小型武器(small arms)と総称されます。冷戦時代、これらは東西両陣営がそれぞれ、流通を厳しく制限していましたが、1989年の冷戦終結後は「商品」として扱われるようになりました。特に米国では、冷戦時代にそのビジネスを規制されていた兵器メーカーが、政府や議会へのロビー活動を通じて、戦闘機などハイテク兵器を除いて、原則的に兵器の自由貿易を促していったのです。

その結果、コカコーラなどと同じく、兵器もライセンス生産が行われるようになり、開発途上国に先進国なかでも米国の兵器とほぼ同じ小型武器を生産する工場が立ち並ぶことになっただけでなく、「需要のあるところに供給が発生する」という市場の論理のもとに、中東やアフリカの紛争地帯には、必要以上の小型武器が流入することになりました。1991年から2001年までの世界における武力紛争の死者は600万人といわれ、その約半数が小型武器による死者と推計されます[Ted C. Fishman (2002) 'Making a Killing', Harper's Magazine, 305(1827), p.39]。また、詳細なデータは不明ですが、現代でもシリア、イラク、アフガン、コンゴ、マリ、ソマリアといった紛争地帯でも、単価が安く(Small Arms Surveyによると、アフガニスタンではAK47が10ドル前後で手に入る)、入手が容易な小型武器が、戦闘の中心になっていることは確かです。

小型武器が、いわば「実質的な大量破壊兵器」であるという認識のもと、EUやカナダの主導により、1998年に欧州安全保障協力機構(OSCE)で、製造・移転に関する管理、輸出基準の策定、過剰蓄積の削減といった、小型武器の拡散を防止する管理体制の構築が合意されました。OSCEには、米国のほか、やはり兵器の大輸出国であるロシアも加盟していますが、この際には両国は正面からの異議申し立てをほとんど行いませんでした。冷戦時代に、東西両陣営が加盟する国際機構として設立されたOSCEは、潜在的な敵対国同士が、情報の交換などによって相互の信頼醸成を図り、不測の武力衝突を回避することを目的とします。そのため、この場にあっては、米露といえども、小型武器の拡散防止に正面から反対することはできなかったとみられています。

しかし、小型武器の拡散を取り締まる、よりグローバルな取り組みが進むにつれ、米国はロシア、さらに中国とともに、これを実質的に骨抜きにする方向で関与を強めてきました。2001年、国連で開催された小型武器拡散防止のための会議は、正式には「小型武器の非合法取り引きのあらゆる側面に関する国連会議」といいます。この名称が象徴するように、小型武器の流通を世界的に規制しようとするEU、カナダ、さらにアフリカ諸国などの取り組みは、米露中の抵抗により、国連での討議は「非合法取り引き」に限定されることになったのです。その結果、同会議の「行動計画」では、小型武器への識別ナンバー打刻の徹底や、流通管理の記録を強化するなどの取り組みが盛り込まれましたが、それは裏を返せば、「合法的」であるならば兵器流通を取り締まることはするべきでない、ということを意味します。つまり、買う、買わないは「消費者」の自由で、供給サイドは違法な製品でないことを明示すれば、それでよい、ということです。ここに、「銃が悪いのではなく、悪い使い方をする人間が悪い」というNRAの主張と同じ論理構造を見出すことは容易です。実際、NRAメンバーは2001年の国連での会議にもNGOとして参加し、「市民の自衛する権利」を盾に、小型武器の流通規制に反対する論陣を張っています。そして、いまでも主に「合法的」な売買により、中東やアフリカの紛争地帯に小型武器が流入する状況が続いているのです。

良かれ悪しかれ、米国の政治体制は、資金力や動員力のある企業や団体の影響力が、政府や議会の意思決定を大きく左右するものです。そのなかで、ボーイングなど兵器メーカーとともにNRAは、小型武器の拡散を防止することによる紛争管理に消極的な、米国の対外政策の基盤になってきたといえるでしょう。それは、少なくとも結果的には、世界の紛争地帯でのゲリラ組織などによる武装活動を、市場を通じて間接的に支援してきたことを意味します。

力によって初めて守られる生命や安全があることや、「自衛する権利」そのものは否定できません。また、NRAのみを悪役に仕立てあげることも、米国内部の犯罪や、開発途上国での紛争に関する、その他の要因を覆い隠すことになるため、慎まなければなりません。とはいえ、人の善意にのみ期待してほぼ無制限に販売することを求め、問題があれば「使い方が悪い」という論法で当事者のみを非難することは、それが武器という本来人を殺傷することを目的とする道具であるだけに、無責任と言わざるを得ません。まして、米国民の「自衛する権利」が結果的に他国の安全を脅かす一因になっているとなれば、尚更です。銃規制を求める米国内部の世論の推移は定かでありません。しかし、仮に今後、この流れが拡大していけば、米国の対外政策にも少なからず影響を及ぼすものとみられるのです。

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