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  • 2014.03.05 Wednesday
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メビウスの輪としての北朝鮮「ロケット実験」第2ラウンド

 12月1日、北朝鮮は今月10日から22日の間に、北西部・東倉里(トンチャンリ)の発射場から、観測衛星「光明星3号」を運搬ロケット「銀河3号」で打ち上げると発表しました。いうまでもなく、これは「ロケット発射実験」の名目による、弾道ミサイル発射実験に他ならないわけですが、いずれにせよ北朝鮮は今年4月に発射実験に失敗しており、ミサイル実験を一年に2回行うのは初めてです。ハイペースでミサイル実験を行う背景には、何があるのでしょうか。

 以前にも書いたように、そして多くの識者が指摘するように、北朝鮮のミサイル実験には、内外に向けた二重の意味があります。

 一方にあるのが、対外的な「威嚇」としての側面です。経済が破綻しかかり、飢餓に苦しむ人が恒常的に数十万人もいる状況で、海外からの投資や融資、さらに援助は北朝鮮経済を立て直すうえで不可欠です。しかし、まともに協力を要請すれば、いまの体制は存亡の危機にさらされます。特にアメリカは、援助をするとなれば、民主化や人権保護を前提条件にすることは、目に見えています。その場合、体制の中枢部でいい生活をしてきた金正恩の一族をはじめ、労働党幹部や軍高官は、既得権益を失うばかりか、身の安全すら脅かされるかもしれません。体制の維持という大前提の下で、海外から資金を獲得するために、核ミサイルの保有によって立場を強めることは、周囲から反感を招くことさえ無視すれば、一番手っ取り早い手段であるのは確かです。

 もう一方には、対内的な「ショー」としての側面です。現在の北朝鮮の体制を支える大きな力は、軍にあります。最高指導者といえども、その満足感を引き出さずに、自らの支配を安定化させることはできません。金正日の時代も、1993年の国防委員長就任、1998年の憲法修正にともない、「国家の最高職責」として国防委員長が位置づけられたとき、それぞれノドン、テポドンミサイルが発射されました。最高指導者と軍の関係が節目を迎えたとき、前者が後者を重視しているというアピールをするショーとして、ミサイルや核実験は行われてきました。昨年の暮れ、金正日が死亡し、その後を継いだ金正恩は、2009年に後継者に決まる以前、党にも軍にもほとんど関わりをもっていませんでした。血統による以外、その就任に何ら明確な理由がない後継者にとって、もともと力のある軍への配慮なしに、権力の座にとどまることは不可能です。その意味で、金正恩体制の下で、ミサイルや核実験がエスカレートするであろうことは、当初から予想されていたことであり、日本をはじめ周辺国は、4月と同様に、万全の警戒態勢をとる必要があるでしょう。

 ただし、体制維持の前提そのものは揺るがないとしても、(その最終目的地がどこであるかはともかく)北朝鮮には従来と少し違う方向へ向かい始める姿勢をうかがうことができます。

 まず、北朝鮮の体制内部の変化です。昨年の金正日の葬儀では、金正恩とともに、4人の軍人(李英鎬・元総参謀長、金永春・元人民武力部長、禹東則・元国家安全保衛部第1副部長、金正覚・人民武力部長)が霊柩車に同伴しました。彼らは金正日体制を支えた軍の最高幹部で、いわば金正恩の後見役とも目されていました。しかし、今年の初めから順次、公の場から姿を消し、11月末に金正覚・人民武力部長が更迭されていたことが発覚したことで、全員が一年を待たずに更迭されたことが明らかになったのです。

 このうち、特に李英鎬・元総参謀長は、今年4月のミサイル発射実験を主導したとみられています。金正日の「先軍政治」を主導していた4人が相次いで失脚し、それと入れ違いに勢力を伸ばしたのは、「穏健派」とみなされる張成沢・国防副委員長でした。金正日の妹・金敬姫の夫の張成沢は、やはり金正恩の後見人と目されていた人物ですが、その彼が今年8月、50人の労働党幹部を引き連れて中国を訪問し、中国商務省との間で、中朝国境地帯の黄金坪と羅先の二つの経済特別区の開発に関する管理委員会を共同で成立させることなどに合意したのです。

 4月のミサイル発射実験に対しては、朝鮮半島の核バランスが崩れることを嫌う中国も自重を促す立場をみせました。しかし、北朝鮮がこれを無視して実験を強行したため、その後の国連安保理での北朝鮮非難決議に中国も賛成した経緯があります。ここから金正恩体制の、中国との関係改善を目指し、さらに経済改革を進めようとする意図をうかがうことができるでしょう。

 その一方で、金正恩体制は、アメリカとの交渉を実質的に進める傾向をみせています。つい先日、今年8月にアメリカのCIA(中央情報局)、NSC(国家安全保障会議)関係者が、秘密裏に平壌を訪問していたことが判明しました。これについて朝鮮日報は、北朝鮮がミサイル実験に踏み切った場合、中東での混乱に加えてさらにロムニー陣営に攻撃の材料を与えることを危惧したオバマ政権が、大統領選挙の終結までにアクションを起こした場合は強い対応に出る、言い換えれば、何かアクションを起こすならその後にしてもらうよう、交渉に向かった可能性を示唆しています。真偽は不明ですが、11月の初めにアメリカ大統領選挙が終わり、約1ヵ月後に実験が発表されたタイミングを考えれば、この推測があながち的外れでないように思われます。いずれにしても、ミサイル実験をテコに、北朝鮮が最大の交渉相手とみるアメリカと直接ルートを作りつつあるとすれば、それは停滞してきた米朝交渉が本格化する糸口になるとみられます(ただし、それは日本が蚊帳の外に置かれることを意味する)。

 ただし、関係国、なかでも米中との関係改善を目指すとしても、今回の実験発表のように、北朝鮮が急激な方向転換をするとは考えられません。関係改善を目指すとなると、最初に述べたように、経済的に立場上弱い北朝鮮が相手ペースの交渉に乗らないようにするためには、交渉材料としての核・ミサイルがますます有意性をもつことになります。関係国との関係改善を図るにしても、脅すにしても、いわばメビウスの輪のように、どうしても北朝鮮は核・ミサイル実験から抜け出せない状況にあるのですが、軍内部の人事も、今後の北朝鮮が一本調子で穏健化していくことが考えにくいことを示しています。

 先ほど触れた、更迭された金正覚に代わり、人民武力部長に起用された金格植・元第4軍団司令官は、必ずしも「穏健派」とはいえません。金格植が第4軍団司令官に就任したのは、2009年2月。第4軍団は、黄海にある韓国と北朝鮮の間にある境界線、北方限界線(NLL)を管轄しています。しかし、金格植の司令官就任後、北朝鮮は2009年11月に警備艇によるNLL突破と韓国軍との交戦(大青海戦)、2010年3月に韓国海軍の哨戒艦「天安」の爆沈事件、さらに2010年11月には延坪島砲撃事件を、立て続けに起こしました。その後に人民武力部長に昇格したことに鑑みれば、第4軍団によるこれら一連の攻撃的な姿勢が、その司令官であった金格植によって指導されたとみて間違いないと思われます。だとすれば、金正恩は一方で張成沢に代表される穏健派を、一方で金格植らの強硬派を、自らの両脇においていることになります。この観点から、改革を志向する勢力が台頭しているとしても、軍内部の強硬派はいまだに力をもっているとみてよいでしょう。

 とはいえ、いかなる体制であれ、体制の移行や政策の転換を進めようとする際には、必ずと言っていいほど保守派と改革派の争いが生まれ、これをコントロールせずに、方向転換をすることはできません。また、落下傘式に最高権力者となった金正恩が、(仮に改革志向をもっていたとしても)北朝鮮の改革をリードすることは困難です。ただし、旧体制や軍の影響力の維持を最優先にする保守派であったとしても、第4軍団司令官という必ずしも高くない地位にあった金格植を人民武力部長に据えたことは、北朝鮮首脳部からみれば恩義を与えることになります。これを金正日時代からの古参幹部を一掃したことと併せて考えれば、党に対する軍の影響力はやや低減することになるといえるでしょう。その意味で、今回のミサイル発射実験は、北朝鮮首脳部にとって、軍のなかに生まれているであろう自らの地位低下への懸念を慰撫し、少なくとも離反することがないようにするための効果があるとみられるのです。


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