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  • 2014.03.05 Wednesday
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「米国が5年後までに世界最大の産油国になる」:そのとき、世界はどうなるか

 際エネルギー機関(IEA)は11月12日の報告書で、シェールガス、シェールオイルの生産により、2017年までに米国がサウジアラビアを抜いて、世界最大の産油国になるとの予測を示しました。頁岩(shale)と呼ばれる泥岩の地層に含まれる油分を抽出して生産されるシェールガス、シェールオイルは、天然ガス、石油の代替として使用できる、非在来型エネルギー源と目されています。

 在来型の石油、天然ガスが中東・北アフリカに偏って埋蔵されているのに対して、シェールはむしろ西半球に多く確認されています。米国エネルギー庁(EIA)の報告書では、2010年1月1日段階で、世界でオイルシェールの埋蔵が確認されているのは32カ国。技術的に抽出可能な量は、6,622兆立法フィートと見積もられています。北米大陸で大規模なシェール開発が進み、それが本格的に輸出されるようになれば、従来のエネルギー輸出国を原油・ガスの価格抑制に向かわせるとも考えられます。

 震災後の日本では、原発存続の是非をめぐって世論が二分するなか、火力発電所の発電量が増えています。世界に目を向ければ、新興国の経済成長により、今後もエネルギー需要は高まりこそすれ、低下することは考えにくい状況です。一方で、在来型の石油や天然ガスには、いつ枯渇するかという懸念がつきまとってきました。この状況下で、本格的に利用され始めたオイルシェールやシェールガスに、新たなエネルギー源としての関心が集まることは、不思議ではありません。日本企業のなかにも、三菱物産のように、既に米国で採掘権を獲得したところもあり、さらに国内でも秋田県や新潟県で採掘試験が行われています。

 ただし、オイルシェール、シェールガスには問題点も指摘されています。その抽出のために、大量の化学薬品を地中に注入するため、土壌が汚染されるだけでなく、染み出したシェール成分が地下水に流入し、
水道水が燃え上がるといった事態が、米国の採掘場の近辺では実際に発生しています。また、あくまでも地下資源であるため、植物から生産されるバイオエタノールのように再生可能エネルギーではなく、地球温暖化を抑制する効果はありません。在来型の原油・ガスの大規模な輸出国であるロシアで、メディアや研究者が「シェール革命」に懐疑的な見方を示しているのは、只の「ひがみ」とも言えません。

 一方で、オイルシェール、シェールガスの本格的な採掘・利用は、国際政治にも小さくないインパクトをもたらすとみられます。特に、IEAの予測通り、近い将来に米国が世界最大の産油国となり、燃料の純輸出国になれば、それは世界のバランスを大きく揺るがすことになります。

 1974年の石油危機以降、米国や日本をはじめとする西側先進国は、エネルギーを安定的に確保する必要性から、サウジアラビアなどペルシャ湾岸の諸国との友好関係に腐心してきました。イランのようにあからさまに敵対的な姿勢をみせない限り、西側先進国は他の地域で行っているような、民主化や人権保護に関する強い要求を、湾岸諸国に対しては控えてきたのです。その結果、在来型の原油の約70パーセントが埋蔵されているこの地域では、サウジアラビアやUAEのように、国王が絶対的な権力をもつ専制君主国家が、いまも生き永らえています。

 一方の湾岸諸国もまた、西側先進国、なかでも世界最大のエネルギー消費国であり、最大の顧客である米国との関係から、石油危機以降、政治的には保守化してきたと言えます。中東における最大の火種であるパレスチナ問題でも、イスラーム世界の一員としてイスラエルを非難するものの、それ以上の関与はほとんどありません。1991年の湾岸戦争で、クウェートを占領したイラク軍に対応するため、サウジアラビア政府が米軍の駐留を認めたことは、湾岸諸国と西側先進国の政治的な結びつきを象徴するものでした。

 この蜜月が大きく転換したのは、2001年の米国同時多発テロと、その後の「対テロ戦争」でした。サウジアラビア王室の関係者から、同国出身のウサマ・ビンラディンに資金が渡っていたことが発覚したこともあり、当時のブッシュ政権は湾岸諸国からの原油輸入への依存度を引き下げることを図りました。

 現代の国際政治は、単純に経済力や軍事力が大きい方が立場上強いとは限りません。「相手との関係が遮断された時に被るダメージや損失」を、国際政治学では「脆弱性」と呼びます。脆弱性が高いのは、関係が切れた時により困る方、ということです。言い換えれば、相手との関係性が壊れた時に、よりダメージの小さい方が、相手に対して強い立場に立てる、となります。家のなかのことを全く知らず、靴下の場所もわからないご主人が、奥さんから離婚を切り出された途端に右往左往する状況で言えば、前者の方が脆弱性が高い、となります。

 グローバルな経済取引が増え、どの国も自らの存立を少なからず他国に依存する状況は、(北朝鮮など一部例外を除いて)ほぼ全ての国が、脆弱性という名のコストを払っていることを意味します。しかし、自国の独立性が損なわれるからそれがイヤだというならば、極論すれば自給自足に戻らざるを得なくなります。したがって、貿易や投資などで、多かれ少なかれ、他国に依存しなければならない状況下で、リスク分散を図って脆弱性を低くすることができるか否かが、その国の独立性、言い換えれば国際的な発言力を左右する、一つの大きな要素となってきるのです。

 この観点から、対テロ戦争を遂行するために、米国が中東産原油の輸入量を減らしていったことは、その賛否はともかく、湾岸諸国への脆弱性を低減させるという意味で合理的な判断だったと言えるでしょう。しかし、原油価格が高止まり、コストの問題もあってバイオエタノールが期待されたほど普及しないなか、米国も最終的には豊富な埋蔵量を誇る湾岸諸国への依存を断ち切ることはできませんでした。これは原油を輸入する側の脆弱性の高さが、米国および西側先進国と、湾岸諸国との間の、微妙なバランスを保つ作用を果たしてきたことを意味します。

 ところが、オイルシェール、シェールガスの本格的な利用の開始と、それによって予測される、米国がエネルギーを自給自足できる状況は、このバランスを崩すことになります。IEAの予測によると、2035年には中東諸国の原油輸出の約90パーセントがアジア向けになるとみられており、その多くがエネルギー需要の高まる中国やインド向けになると想像することに、大きな無理はないでしょう。

 つまり、米国によるエネルギーの完全自給は、その外交的な独立性を高め、湾岸諸国をはじめとする中東、あるいはイスラーム圏に対して、より強硬な姿勢をとることを可能にする一方、これまで比較的穏健な立場にあった湾岸諸国を、西側先進国と必ずしも外交方針が一致しない、新興国サイドに一層向かわせる契機になり得るのです。その場合、例えば現下のシリア情勢をめぐって、西側先進国と中露が対立するような状況は、さらに過熱しやすくなることが懸念されます。その意味で、「シェール革命」は、国際環境の地盤を、まさに頁岩や泥岩のように液状化させる可能性をはらんでいるのです。

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