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  • 2014.03.05 Wednesday
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シリアでの大量破壊兵器使用の可能性を懸念する理由

  界の眼がロンドン・オリンピックに向かうなか、シリアでは凄惨な内戦がさらにエスカレートしています。7月20日以降、政府軍はダマスカスとアレッポの二大都市に兵力を集中させ、戦闘機やヘリをも用いて反体制派を攻撃しています。そしてさらに問題なのは、23日にシリア政府が化学兵器や細菌兵器の保有を事実上認め、「外国の軍事介入があった場合」に使用する可能性を示唆したことです。

広く知られるように、毒ガスが兵器として初めて使用されたのは、第一次世界大戦でした。その後、1925年のジュネーブ議定書で、戦争における生物・化学兵器の使用は禁止され、シリアも1968年に同議定書を批准しています。しかし、その製造が容易なことから、特に化学兵器は「貧者の核兵器」とも呼ばれ、シリアがイスラエルやアメリカを念頭に、抑止効果を期待する戦略兵器としてこれらを保有しているという噂あるいは見解は、以前からあったものでした。実際、シリアは生物兵器の生産や保有を禁じた生物兵器禁止条約(1975年発効)は未批准化学兵器の開発、生産、貯蔵、使用を禁じた化学兵器禁止条約(1997年発効)は未署名です。よって、シリアはこれらの大量破壊兵器の生産や保有を禁じる国際条約に縛られることはないので、保有を認めたこと自体は噂の正しさを裏付けるものだったといえるかもしれません。とはいえ、その使用を禁じるジュネーブ議定書は批准しているのですから、それに反してまで使用する可能性を示唆したことは、深刻に受け止めるべきでしょう。

シリアが今回の内戦で生物・化学兵器を使用する危険性は大きいと思われます。

第一に、「外国の軍事介入」が欧米諸国の軍隊を指すと限らないことに注意すべきでしょう。シリアの内戦には、周辺諸国もかかわっています。シーア派の一派であるアラウィー派が中心のアサド政権自身が、やはりシーア派中心のイランからの支援を受けている一方、長年アラウィー派支配に敵意をもってきたスンニ派中心の反体制派は、これまたスンニ派のサウジアラビアなど富裕な湾岸諸国から資金援助を受けています。それだけでなく、自由シリア軍は欧米諸国に逃れている亡命シリア人団体からも支援を受けています。これらを指して、「外国(欧米や湾岸諸国)政府からの支援を受けたテロリスト」と呼ぶことで、「シリアの文脈」では生物・化学兵器の使用が正当化される危険性は、充分にあります。

第二に、アサド体制のもつ特徴が、生物・化学兵器の使用をより容易にしやすいと考えられます。これまでに何度か取り上げてきましたが、アサド大統領は父・ハーフェズの意向で急遽、後継者に据えられたため、軍や情報機関を統制しきれない「細腕の『独裁者』」です。例えが適切でないかもしれませんが、いわば中央から派遣されたキャリア警察官が地方の警察署の署長に据えられながら、その実質的な権限は生え抜きの副署長などに握られているのと、ほぼ同じです。軍事作戦の主要な、実際的な判断は、軍や情報機関が行っているとみた方がいいでしょう。

生物・化学兵器は市民も社会的弱者も関係なく、無差別の殺傷を可能にするため、その使用には一般に強い「タブー」意識があります。湾岸戦争で化学兵器の使用を威嚇に使用したイラクのサダム・フセインが、その後急速に国際的に孤立していったことは、当然といえば当然の結果でした。しかし、その「タブー」に起因する批判は、公式の最高責任者に向けられることになりがちです。シリアの実力者たちからみた場合、最終的な責任はアサドに被せることが可能です。故に、生物・化学兵器の使用に関するハードルは、シリアにおいて低くなるといえるのです。

第三に、現代において生物・化学兵器は、実際に使用する兵器としてよりむしろ、その保有を疑わせたり、ほのめかしたりすることで、相手からの介入を拒絶するための、戦略兵器としての側面が濃厚です。しかし、その脅しは平時において、しかも相手が外国政府である場合には有効なのですが、既に戦闘がこれだけ大規模化しており、相手が政権打倒のために生命を省みなくなっている反体制派を相手にした場合、ほとんど効果を発揮しないと考えられます。使用しないままでの威嚇が成功しないとすると、かえって実際に使用して、恐怖感を相手に植え付けよう、という心理が働くことは、想像に難くありません。

第四に、そして最も切実な理由として、アサド体制が相当程度追い込まれてきている、ということです。大量破壊兵器の保有を認めたこと自体、それを示しています。後ろ盾だったロシアも、既にシリア向け武器輸出を停止する方針を示しており、さらに大量破壊兵器の使用の可能性に関してアサド政権から打診を受けた際、当然と言えば当然ですが、これを一蹴したと伝えられています。国際的にも孤立しつつあるなか、主要都市での決戦に力を集約し始めたこともまた、アサド体制の苦境を物語ります。

以上の理由から、そうならないことを念じながらも、シリアの実力者たちが生物・化学兵器の使用という禁じ手に踏み切る公算は大きいといわざるを得ません。そして、もし仮に大量破壊兵器が使用された場合、シリア内部の相互不信はさらに高まり、戦闘が収束した後も、その将来に暗い影を投げかけることになると予想されるのです。

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