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  • 2014.03.05 Wednesday
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無人機によるテロリスト掃討作戦は合法的・倫理的か

 4月30日、反テロセンターのジョン・ブレナン議長がワシントンでの講演で、パキスタンなどで行われている、テロリストに対する無人機による攻撃を、アメリカ政府関係者として初めて認めました。ブレナン議長は、遠隔操作の無人航空機によるテロリスト攻撃が、戦略的に「賢明」であるだけでなく、「合法的」で、なおかつ「倫理的に問題ない」と強調しました。

無人機による攻撃が、米兵の犠牲者を減らし、さらに大規模な部隊展開を不要にするという点において、ブレナン議長のいう「戦略的に賢明」であることは、少なくともアメリカの立場に立った時に、理解しやすい主張だと思います。もっとも、米兵による民間人の無差別殺傷事件などもあり、無人機による作戦は、冷戦時代から友好関係にあったパキスタン国内の反米世論に拍車をかけている側面は否定できません。その意味で、「戦略的に」というより、「戦術的に」といった方が妥当かもしれません。

では、「合法的」と「倫理的」に関しては、どうでしょうか。

ブレナン議長によると、「合衆国は国際テロ組織と戦争状態にあり」、合衆国憲法と国内法に基づいて「大統領にはその遂行のための権限が与えられている」。また、「遠隔操作による攻撃を禁止するいかなる国際条約もない」がゆえに「国際法的にも問題ない」という主張でした。

確かに、
「規制する国際法がないのだから法的に問題ない」というのは、少なくとも違法でないのは確かで、法律論としては正当な言い分と言わざるを得ません。

また、
戦争状態であるとするならば、アメリカの国内法では最高責任者たる大統領に必要な措置をとることが認められているでしょう。しかし、その法律の効力はあくまでアメリカ国内で適用されるはずのものです。パキスタン国内での遠隔攻撃を、アメリカの国内法で正当化することは、いささか無理があると言わざるを得ません。アメリカは国家として自国と自国民を守る権利と義務があるとしても、だから了解を得ていない他国での軍事行動が認められる、ということにはならないはずです。ブレナン議長の講演では、国家を防衛するアメリカの主権については述べられていますが、パキスタンの主権については一切触れられていません。これでは、「アメリカの主権は他国の主権に優越する」と公言していると取られても仕方ありません。

一方で、ブレナン議長は遠隔操作による攻撃が「テロリストと民間人の識別を容易にするために、誤爆によって無関係の市民を殺傷する危険性も小さく」、また「米兵の犠牲者も少なくて済む」ので、倫理的に問題ないとも述べています。要するに、「犠牲が少なくて済む」から倫理的に問題ないという論理です。

恐らく、この点こそが、最も議論の余地があるところではないでしょうか。

ブレナン議長の主張に代表されるアメリカ政府の言い分は、「米兵が現地で直接ターゲットに接近するよりも、遠隔攻撃の方がテロリストだけを殺害するのに適している」、さらに「テロリストはアメリカやその他の国で無関係の市民に無差別の殺傷行為を行っているのだから、それを攻撃し、排除することに道徳的、倫理的な呵責は必要ない」という前提に立つと言えます。

国家であれ、個人であれ、危害を加えようとする者から自らを守ることは、権利として認められるべきでしょう。それは自己の生存権、あるいは自然的な生存欲求に叶うものです。ただし、それが「倫理的」かどうかは話が別です。

オバマ大統領自身も所属するアメリカの民主党員の多くは、自覚的にか無自覚的にか、カント的なリベラリズムにイデオロギー的な基盤をもっています。ドイツ観念論の父であるカントは、ロックら英米系の古典的リベラリストと異なり、「自然的欲求」である「幸福の追求」を制約されないことをもって自由とは捉えませんでした。合理的な理性を信奉したカントにとって、自由とは「理性が命じるところの義務として道徳法則に従うこと」に他ならなかったのです。つまり、自然的な欲求であるところの幸福の追求は動物が自然界の法則に従って生きることと変わらず、自然的な欲求を理性で克服することこそ精神を解放し、人間にとっての自由を獲得する営為だとカントは捉えたのです。人間の理性に信頼を置くカントは、国際連合の原型となった、政府間組織の創設による戦争の廃絶の理念を掲げ、現代の国際政治学においてその影響は、人道危機など陥った他国への介入などに見出すことができます。

ところで、カントが強調した道徳法則とは、「汝の意志の格律が、常に同時に普遍的法則の原理とみなされるように行為せよ」でした。つまり、その行動や判断が、何時いかなる時でも通用するものであるようにすることが道徳的であるということです。ウソをつく行為は道徳的でない。それは、ウソをつくという意志を、何時いかなる時も容認することはできないからです。それを認めてしまえば、どんな約束も意味を失います。言い換えれば、自分を例外扱いしないことが、カントの道徳法則の核心なのです。

これに照らして、ブレナン議長あるいはオバマ政権の主張は「道徳的」、「倫理的」と言えるのでしょうか。そうとは言えないと思います。カントの道徳法則に従うなら、「敵だけに標的を絞って殺害することが倫理的」と主張する場合、同じ主張をテロリストがすることも認めなければなりません。現代では、テロ組織もハイテク兵器を駆使しています。仮にテロ組織が遠隔操作でアメリカ政府首脳だけを標的にした攻撃を行った場合、それも「倫理的に問題ない」とブレナン議長は言わざるを得なくなります。アメリカ政府関係者とは、それほど寛容なのでしょうか。つまり、ブレナン議長の主張は、自分(アメリカ)だけを例外扱いしているのであり、その意味でカントの道徳法則に反すると言えるのです。

もちろん、テロ組織の脅威に晒されている中で、その掃討は避けられないと思います。また、その場合に無関係の市民を巻き込まないようにする必要もあるでしょう。さらにまた、アメリカ国内の嫌戦ムードと経済状況に鑑みれば、アフガニスタンやパキスタンでこれ以上米兵から犠牲者を出し続けることは、選挙を控えたオバマ大統領にとって得策ではなく、無人機による攻撃は政権あるいはアメリカにとって現実的な選択と言えるでしょう。

しかし、そもそもカントの道徳法則に従えば、無人機による攻撃であれ、有人機による攻撃であれ、それが自らの生存を確保する必要に迫られたものとして止むを得ない場合であったとしても、「敵を殺すこと」そのものに倫理的価値を見出すことはできません。それを認めてしまえば、敵が自分を殺すことにも、同じく倫理的価値があると承認しなければなりません。つまり、「自分の安全を確保するために敵を殺すこと」は、自然的な生存欲求を満たすために認められるべきではありますが、それを「倫理的」と言うことはできないのです。「遠隔攻撃でテロリストだけをターゲットにすることは、他に被害を出しにくい」というブレナン議長の主張を認めるとしても、それは民間人に多くの犠牲者を出す大規模な掃討作戦よりも「倫理に反する部分が小さい」に過ぎず、「倫理的に問題ない」という主張は認められないのです。

繰り返しになりますが、アメリカも国家である以上、自国を防衛する権利と義務はあります。しかし、それはあくまで自国が生存する権利を遂行しているものであり、そこで倫理的、道徳的な価値を強調することは、政治的には必要であったとしても、実際にそれらをテロリストへの遠隔攻撃に見出すことはできません。むしろ、戦争行為に倫理性を強調すること自体が、自らを過度に正当化するあまり、敵対する者からの反発を強め、無条件の対立を加熱させる側面があるといえるでしょう。

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  • 2014.03.05 Wednesday
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  • 09:13
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コメント
倫理は私達の何にとって必要なのでしょうか。より良い平和な生き方を求めるのならば、その考えは傲慢なことです。誰が他人と同じ思考を持ち得ましょうか。本来、バラバラに生きる人間が共存していることは恐いことなのではないでしょうか。生きている私達が今必要としているものは、当然生きている限りのもので、死せる者にとっては不要なものばかりであります。生死を分けるものはほんの些細なものです。薬品を使わずとも、教育一つで人は死にます。倫理は、「倫理」という教育の名のもとに人間の破壊を行ってはいないでしょうか。第二次世界対戦下の私達を間違っていると思えるのは、国の為に死ぬ事を善とする教育を受けていないからです。テロリストや各国の非を挙げられるのは私達がそれを非であると教育を受けているからでありましょう。生死と同じです。必ずしてこちら側が生だとは言えません。私達もまた、あちら側に転じる可能性は大いに有ります。人間の幸福その他の面で同質の思考を求めはしません。しかし、何が人を殺し、何が人を生かすのか、それは共に同じ思考を持ちたいものです。
乱文失礼致しました。
  • 椿
  • 2012/06/10 11:43 AM
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