スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

  • 2014.03.05 Wednesday
  • -
  • -
  • -
  • -
  • -
  • by スポンサードリンク

北朝鮮「人工衛星」実験がもたらし得るもの

3月16日に、4月12日から16日までの間に「人工衛星」を打ち上げると発表して以来、北朝鮮は孤立を深めています。オバマ大統領が韓国の大学での講演において、「瀬戸際外交」がもはや通用しないと北朝鮮政府首脳に対して異例の呼びかけを行ないました。これに加えて、日本や韓国だけでなく、従来は北朝鮮に友好的な中国の胡錦濤国家主席も、「ミサイルより国民の生活を優先すべき」として、既に実験の中止を複数回に渡って求めていることを明らかにしています。また、やはり北朝鮮の後ろ盾となってきたロシアも、メドヴェージェフ首相が 実験の自制を求めるなど、今回は対応に変化がみられます。

周知のように、今年は北朝鮮建国の父、金日成の生誕100周年にあたります。それにあたって、発足したばかりの新体制による支配の正当性を喚起するためにも、北朝鮮政府は国民の生活改善に迫られているとみられます。今年2月に再開したばかりだったアメリカとの交渉で、食糧支援が大きなテーマになったことは、不思議ではありません。そのタイミングでミサイル実験とは、当たり前の思考からすると、自分で自分の首を締めるようなものですが、これは北朝鮮と日米間、そして北朝鮮国内の二つのレベルで考える必要があります。

今さら言うまでもありませんが、自ら危機的な状況を演出し、相手に譲歩を迫るのが、北朝鮮の十八番「瀬戸際外交」です。つまり、今後の交渉において不利な状況が見え始めるなかで、立場のアンバランスをわずかでも解消するためには、敢えてミサイル実験を行い、「それをやめる」ことを交渉材料にするしかないのです。その上で、もらうものをもらったら、あとは約束を事実上、反故にする。これを繰り返せば、北朝鮮は少なくとも日米韓と立場上は対等であり続け、更に中国やロシアの面子を部分的に立てながらも、最終的にはこれらからの独立性をも確保できるのです。わざと理不尽な行動をとることで相手に譲歩を迫り、自らの利益を最大化するという、「非合理性の合理性」を見て取ることができます。ただし、中ロの明らかな反対にもかかわらず、北朝鮮が実験を強行しようとしているところが、今回の最大の特徴です。これは、中ロに対するこれまでの若干の遠慮すらも北朝鮮がなくし初めていることを示すものと言えるでしょう。

他方、北朝鮮の国内に目を向けると、このミサイル実験に体制内の権力闘争の現れをみることもできます。現在の北朝鮮の最高職責は、軍を統括する労働党の「国防委員長」です。これが、あらゆるものより軍事が優先するという、北朝鮮の先軍政治の象徴です。ただし、長い期間をかけて軍に対する支配力を貫徹していった金正日と異なり、金正恩は落下傘式に据えられた名目状の最高責任者に過ぎません。この状況下で、重石がとれた軍が、体制内での自らの強化を図って、これまで以上に軍拡に突き進もうとすることは疑いありません。また、国内政治の変動の結果、核・ミサイルの保有で鼻息が荒い軍の発言力が相対的に向上したことは、対外的には中ロに対する遠慮の低下という側面に繋がっていると考えられます。

金正恩にしても、対外的な冒険主義に加担することは、「飾りもの」として軽んじられないために欠かせません。そうだとすると、各国がいかにプレッシャーをかけたとしても、それによって北朝鮮政府がミサイル実験を中止することは、ほとんどないと思われます。むしろ、北朝鮮国内の文脈で言えば、各国からの圧力が強まれば強まるほど、「外国の妨害に負けない指導者」を演出できることになり、逆にこの状況下で実験を自制すれば、「外国の圧力に屈した軟弱者」となるからです。

仮に実験を取りやめるにしても、内外向けの口実はほとんど見当たりません。「不具合の調整」でロケット発射を延期することは、先進国では珍しくありませんが、国威を内外に示したい北朝鮮にとって、技術力に対するマイナスイメージをひろげることは言えません。「ミサイル」でなく「人工衛星の打ち上げ」で実験を強行しようとしている以上、「外国からのお願いに、我らの首領様が寛大な措置をとってやった」といった類の国内向けの方便も使いにくくなります。人工衛星ならば国際的に権利が認められているので、「寛大な措置」をとる必要がないからです。これらに鑑みれば、北朝鮮政府はまさに退路を絶っており、譲歩することは、極めて考えにくい状況です。

しかし、今回ばかりは、北朝鮮政府首脳の期待通りの成果が得られるかどうかは、定かでありません。中ロは西側先進国による干渉や介入から開発途上国の「独裁者」を保護することで、自らの影響力を保持してきました。その立場からすれば、いかに厄介者であっても、北朝鮮の現体制を容易に見限ることはできません。しかし、それにも限度があります。露骨に中ロの要請を無視してミサイル実験を強行し、朝鮮半島の緊張が高まれば、それは中ロにとっても見過ごせない状況になります。中国やロシアも、無条件に各国の「独裁者」を支援しているわけではなく、自らの利益に反する場合には見限ることもあります。最後の最後でカダフィが切り捨てられたことは、その象徴です。

その意味で、今回のミサイル実験発表をきっかけに顕在化した、誰も支援してくれない状況は、一面において孤立を示しますが、それは他方で、誰も抑制できなくなった北朝鮮が、より向こう見ずな行動に出やすくなる可能性をも意味します。言うまでもありませんが、カダフィやリビアと違うのは、北朝鮮が核兵器を既に保有している点です。これがあるからこそ、中ロはある程度我慢して北朝鮮と付き合ってきたとさえ言えます。しかし、中ロの反対すら押し切ってミサイル発射実験に踏み切ったとき、朝鮮半島情勢はこれまでになく危険なステージに入ると予想されるのです。

スポンサーサイト

  • 2014.03.05 Wednesday
  • -
  • 22:09
  • -
  • -
  • -
  • -
  • by スポンサードリンク

コメント
コメントする








   
この記事のトラックバックURL
トラックバック

iPad用の電子書籍アプリを作りました![佐門准教授と12人の哲学者]


公式サイト

カレンダー

S M T W T F S
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031   
<< May 2017 >>

最新エントリー

カテゴリー

アーカイブ

プロフィール

search this site.

sponsored links

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM