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  • 2014.03.05 Wednesday
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震災から5ヶ月に想う:J.S.ミルの訓え

  災から5ヶ月が経ちました。被災された方々には、改めてお見舞い申し上げます。

  この間、日本では、いろいろな課題が浮き彫りになったと思います。原発の是非はその際たるものです。しかし、それ以外にも、「非常事態」を想定した法令が整備されていないゆえにトップリーダーが右往左往する状況、原子力安全保安院に象徴されるいびつな行政機構の弊害、そして中央と地方の役割分担の不明確さ、などなど。

  もちろん、これら全ては、いわゆる「国のかたち」に関わるものであり、「のどもと過ぎれば」で忘れてよい課題ではありません。しかし、「復旧・復興」が叫ばれるなかで忘れていけないのは、どんな「国」を再建するのかという問題です。

  被災した人たちの生活を保障し、放射能汚染から生命、安全、財産を守ることが、最優先課題なのは、言うまでもありません。また、住宅地の整備や、インフラや産業の復興も急務です。ただ、(まだその道程は遠いですが)これら肉体的、物質的な充足を満たせる状態になった後、どんな精神的充足を満たせる国や社会を目指すのか、ということもまた、大事な課題だと思います。

  なにが「幸福」なのかは、人によって違うでしょう。物質的な充足をもって「幸福」と感じる人もあるでしょうし、家族との時間を「幸福」と感じる人もあるでしょう。あるいは、自分ひとりで趣味に没頭することが「幸福」な人もあると思います。しかし、なんであれ、大事なことは個々人が自らの「幸福」を追求できることです。そのうえで、さらに重要なことは、物質的充足そのものが「幸福」と限らないということを再認識することだと思います。

  私より少し上の世代は、バブル期に就職した世代です。高度経済成長からバブル崩壊までの間、日本では物質的充足そのものを目的化し、「豊かな生活」が「幸福」の象徴と捉えられていたように思われます。無限に経済成長が続かないことが明らかになった途端、精神的支柱まで失われ、日本社会の求心力が急速に失われていったことは、偶然ではありません。似たような状況は、経済成長そのものを目的化している、現在の新興国、なかでも中国に顕著なのではないでしょうか。

  「衣食足りて礼節を知る」といわれるように、物質的基盤があってこそ、精神的な領域に気を配ることができるということは確かだと思います。しかし、その一方で、日本では長く「衣食足りて」の部分そのものが目的化されてきた、ということです。しかし、いくら経済成長しても、上をみればキリがありません。近年の金融危機は、経済成長や利潤の拡大そのものを目的化する、グローバルな潮流の帰結でもあります。

  その意味で、今回の震災は、もちろん大きな悲劇ではありますが、その一方で日本という社会が、何を目指すのかを再考する機会になるでしょう。物質的基盤の確保を目的ではなく、個々人が自らの精神的充足を目指すための手段として捉えなおす、ということです。物質的充足のみを目指す社会が、逆に脆いものであることは、バブル崩壊後の日本に暮らした人間なら、知っているはずです。そこで「バブルを再び」と願うより、別のステージに一歩踏み出す方が、社会としての成熟に繋がると考えるのは、私だけでしょうか。

  ジョン・スチュアート・ミルは、『功利主義』のなかで、以下のように強調しています。

  「満足した豚より、不満足な人間の方がよく、満足した愚か者より、不満足なソクラテスの方がよい」。

  厳密で、水も漏らさぬ思考と筆致が特徴のJ.S.ミルにあって、ひときわ目立つ、大胆な一節です。

  ミルは「最大多数の最大幸福」で知られる功利主義者ジェレミー・ベンサムから影響を受けながらも、物質欲を正当化する功利主義からの決別を図りました。ベンサムが物質的快楽と精神的快楽を同列に置いたのに対して、J.S.ミルは後者に優位を置いたのです。「人間」や「ソクラテス」が「豚」や「愚か者」よりいい、というのは、前二者が物質的快楽に埋没せず、さらに自分が享受しているもの以外の「幸福(快楽)」について知っていて、それとの対比が可能であるから、ということです。

  ここからは、物質的な充足感のみを求めるのでなく、それを踏まえたうえで、精神的充足を目指すべき、というミルの想いが伝わってきます。「(ルソーは人間のハートに訴えかけたが)ミルは人間のマインドを高めた」と評される所以です。古来、日本には「足るを知る」という言葉があります。ミルの思想は、これに通じるものと言えるでしょう。

  iPad アプリ『
佐門准教授と12人の哲学者』の製作が佳境です。そのなか、イラスト担当のたなか鮎子さんから、震災復興チャリティへ“Art Tails”への参加を打診されました。世界各国のアーティストが、それぞれの作品を持ち寄り、iPhoneアプリとして販売して、その収益を震災復興に寄付するという趣旨です。「アーティスト」の一言に一瞬ひるんだのですが、及ばずながら協力することにしました。現在、アップルへの申請中だそうですが、ウェブサイト上でみることができます。

  そうそうたるアーティストが集うなか、我ながら、まるっきり「黒い羊」状態ですが、そこで提出したvol. 1では、先ほどのミルの一節を引用しました。震災後の日本に想うことを、ミルに託した次第です。

  ご協力いただければ、幸いです。

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  • 2014.03.05 Wednesday
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