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  • 2014.03.05 Wednesday
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サンデルとパットナムとタイガーマスク

   売新聞のシリーズ「日本の改新」第1部「識者に聞く」の最終回で、マイケル・サンデルが日本の「無縁社会」を語っていました。市場経済化によるコミュニティの崩壊を再生させるために、共通善(common  good)と市民の道徳を陶冶する必要性を強調しながら、保守的な価値観をひたすら墨守せず、何が大事なのかを明るみに出すためのディベートの重要性を訴えていました。概ね、彼らしい意見だったと思います。

  「無縁社会」というのは確かに日本の現状を表す用語として生まれましたが、同じように市場経済化によって人間関係が希薄になった状態は、早くから欧米諸国で指摘されていました。その嚆矢は、ロバート・D.パットナムの1995年の論文"Bowling  Alone"(「ひとりでボウリングをする」)でした(日本語版は
こちら)。パットナムによれば、1980年から1993年の間にアメリカのボウリング人口は10パーセント増えたのに、仲間内でのボウリングは40パーセントも減少していました。これは、ボウリング場での社会的交流が失われ、ボウリングが単に個人の娯楽となったことを意味します。

  パットナムの論文には、"Declining  America's  Social  Capital"(「アメリカにおけるソーシャル・キャピタルの減退」)という副題が付いています。ソーシャル・キャピタルとは、無理に日本語にすれば「社会資本」とか「社会関係資本」とかになりますが、要するに社会内部で人間の行動を拘束する信頼関係、規範、共有された価値観などの総称を指します。ソーシャル・キャピタルが豊かな地域・国は、そうでないところと比べて、社会や政治の安定や公正さにおいて優れているという報告があります。他人を信頼できる社会が暮らしやすい社会であることは、容易に想像されます。

  サンデルが言うところの共通善や市民としての徳の陶冶は、このソーシャル・キャピタルの考え方と近いものです。他者との協力によって社会の安定と再生産を図ることで、個人にとっても暮らしやすい状況が生まれる、ということです。ただし、サンデル自身が言っているように、個人主義が前提となっている現代の社会で、コミュニティの拘束力を強調することには限界があります。特に、ただそこに暮らしているというだけで協力関係を求められることは、移動可能性が高まった現代にあっては、必然性に欠けるものとなりがちです。それでも尚、コミュニティとしての連帯を強調すれば、それは単なる集団主義になり、全体主義への道に向かうことになります。

  個人が単独で生きる社会は生きにくい。しかし、国家や市場が個人を助けてくれるとは限らない。この環境のもとで、コミュニティや市民社会への期待が高まることは必然です。しかし、お互いに助け合うことの重要性は否定しないまでも、明示的であれ暗示的であれ、それを強制することがあってはならないと思います。ある一定年齢以上の人たちのなかには、「向こう三軒両隣」の美風を懐かしむ声が多くあります。しかし、それは江戸時代のキリシタン監視に端を発する、相互監視を目的とする「隣組」と表裏一体の関係にありました。他者への関与を称揚するなら、全体主義に陥ることを避けるために、いかに自発性を喚起するかが大事なのです。

  「タイガーマスク」の主人公、伊達直人を名乗る人たちが、各地の児童養護施設にランドセルなどを送ったというニュースが連日伝えられています。匿名で見返りを求めず、尚且つ他人のために、善意から行う行動には頭が下がります。そしてここに、ともすれば他者からの強制になりがちなコミュニタリアンの思想とは異なる、他者との共同のあり方のヒントがあるように思います。つまり、そこには「できる範囲でできることをする」という善意があります。これが、現代にあって無理のない、しかし尊重されるべき他者との関わり方だと思います。言い換えれば、求められる「共通善」とは、他者への関与を是認しつつも、一方でこれが強制されないものであるべきなのです。



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