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哲学者の横顔(3) 「ゲゲゲの女房」にヘーゲルの影をみた

謹賀新年

  21世紀に入ったのがついこの前のような気さえするのですが、もう2011年になりました。この間、日本の社会は貧困や格差の顕在化などによって閉塞感に覆われる一方、昨年話題になった「はやぶさ」のような技術革新や、「断捨離」などの新たなライフスタイルが生まれてきました。いわば現在の日本社会には、旧来の社会からの変動についていけない側面と、次々と新しい要素が生まれる側面が、コインの両面としてあるのです。

  昨年は流行語大賞に「ゲゲゲの」が選ばれました。個人的にも「ゲゲゲの女房」は大好きで、欠かさず観ていました。ただ、この番組がなぜ高い関心や評価を生んだかということは、脚本やキャストだけで説明できないと思います。つまり、今の日本で欠乏感のある要素が、このドラマには満ちていたということです。そして、年末29日から31日までの総集編をみながら、思わず知らずヘーゲルのことを思い出していました。

  G.W.F.ヘーゲルの著作は難解で知られ、さらに年代によってスタンスの推移があるため、一括りにその思想を語ることは困難です。しかし、ほぼ一貫しているのは、「運命との宥和」という理念です。ヘーゲルの時代、ドイツにはフランスから自由や平等といった理念だけでなく、いち早く産業革命を実現したイギリスから資本主義経済も流入し、中世以来の古い社会のあり方が変容を迫られていました。しかし、人と人の有機的な結びつきの喪失は、個人を社会的因習から解放した一方で、個人の原子化をもたらし、人を絶えざる不安感に陥れることになったのです。そのなかでヘーゲルは、自由・平等・博愛といったフランス革命の理念の普遍性を支持しながらも、固有の環境や条件を無視して、普遍的な価値基準に則ってドイツを改造することに抵抗しました。いわば、ドイツの特殊性のなかに、普遍的な「自由」に適う要素を見出そうとしたのです。

  その先人I.カントが客観的・非歴史的な道徳法則を重視したのに対して、ヘーゲルは普遍的な理念と特殊な歴史的条件の宥和を図ったのです。ヘーゲルの抱いた「自由」の理念は「他者との共同」のなかにあり、「我々なる我、我なる我々」の自我を得ることでした。その理念を具現化しているものが家族、市民社会、国家など「人倫」に他ならなかったのです。人間がこれらの成員たることで自由たり得るという思想は、個人の自律性に期待するカントの啓蒙思想とは異なるもので、必然的に保守回帰を促すものでした。自らの生み出したものでない理念や概念を受け入れざるを得ないなかで、主観と客観の乖離を防ぐための防波堤として、家族や国家が位置づけられたと言えるでしょう。

  「ゲゲゲの女房」が大きな反響を呼んだのは、やはり外部から流入してきた理念や制度を受容せざるを得ないなかで、個人が原子化するストレスに耐えられない社会情勢があると言えます。主人公をはじめ、登場人物の多くは自らの生きる時代や環境の理不尽さに直面し、愚痴をこぼしながらも、家族で助け合い、運命との宥和を果たしながら、しなやかに生きていきます。これが、常に主体性を求められる一方で、「無縁社会」と呼ばれる、人間同士の関係が希薄な時代を生きる我々に、強く訴えた核心だといえます。

  しかし、「ゲゲゲの女房」に象徴される生き方は、言い方を変えれば、環境に適応して生きていくというもので、理不尽な環境の変更を求めないという意味で、保守的な側面が大きいといえます。家族だけでなく、宗教や共同体といった前近代的な集団への回帰は、日本だけでなく世界中でみられる現象です。市場経済という外部からの大きな流れがある一方、国家の役割に大きな期待をもはや抱けないなか、生き残りを図るための防波堤として、これらの求心力が高まっているのです。現代の世界が、運命との宥和を模索したヘーゲルの時代との類似性が高いことに鑑みれば、「ゲゲゲの女房」が多くの共感を呼んだことは必然だったといえるでしょう。


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